人の心に潜むもの

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熊谷 達也 著
「七夕しぐれ」 を読了





 昭和の時代の仙台が舞台。主人公である岩渕和也が小学5年に引越しのため新しく通うことになったH小での出来事が描かれている。
そこでの出来事とは、「部落差別問題を含むいじめ」である。 
この問題は、見てみぬふりをする人。 もう過去のことと片付ける人。 全く知らない人・・・・と、現実の世界でもいろいろであろう。
そこを 小学生であった和也の視点から、感じること、考えること、するべきことを読む側にもそっと問いかけてくるような力を感じながら読んだ。





自分の田舎に帰れば、確かに人権問題などのスローガンが書かれた看板を目にすることも少なくない。
目にするからそれで良いというものでもないが、この本を読んだとき思い出したのが
先日読んだ「ラティーノ・ラティーノ!」。

その中で印象に残った垣根さんの文章、
「言葉の裏にある意識こそが差別を生むということだ。・・・・(中略)・・・言葉に敏感な国に限って、妙に人々の心の中に差別意識が根付いているのを感じることがある。そしてそれを、上っ面の言葉だけで取り繕おうとする」

まさにそこ!なのだと思う。

また、この熊谷さんの作品の中で、とりわけ私が印象に残った文は「いじめと差別では戦う相手が違う」というところ。
確かに「いじめ問題」も、それはそれは根深いものがあるけれど、戦う相手は?と考えると直接いじめている相手ということになる。
しかし、差別問題は直接かかわっている相手だけでなく、実は、その背後にあるもの(例えば、人の心に潜むもの)と戦うということ。
その背後にある見えない相手、もしくは作られてきた社会と戦うということは、自分がどうありたいのか?どうあるべきかを考え それを貫いていくことができるかどうかも同時に問われるのだと思う。

そんな問題を、和也、ユキヒロ、ナオミの3人の行動を通して重くなりすぎずに書かれた作品。
この3人のその後も気になるところ。 続編となる作品が出てくるだろうか?
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by hello02 | 2008-05-14 00:50 |